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職場における投資教育
制度を入れただけで、本当に社員のためになっていますか?

これからの中小企業に必要な「会社で行う投資教育」

「社員の将来のために企業型DCを導入した」

これは、とても大切な取り組みです。

しかし、制度を導入しただけで、社員の老後資産形成がうまくいくとは限りません。

むしろ企業型DCは、導入してからが本当のスタートです。

なぜなら、確定拠出年金では、最終的にどの商品を選び、どのように運用するかを社員自身が判断するからです。

つまり会社が制度という「器」を用意しても、社員がその使い方を知らなければ、せっかくの制度を十分に活かせない可能性があります。

 

そのことを示しているのが、企業年金連合会が公表した「2024年度 企業型確定拠出年金実態調査」です。

企業の82.1%が「継続投資教育」を実施している

今回の調査で特に注目したい数字があります。

企業型DCを導入している企業のうち、82.1%が加入後の継続投資教育を実施したことがあると回答しています。

さらに、投資教育を実施した企業のうち、92.6%が直近3年以内に教育を実施しています。

これは、「制度を説明して終わり」ではなく、定期的に社員へ資産運用について学ぶ機会を提供することが、多くの企業で当たり前になりつつあることを示しています。

経営者の立場から考えてみても、

「一度説明したから分かっているだろう」

ではなく、

「時間が経てば忘れる。だから何度でも学ぶ機会をつくる」

 

という考え方が必要なのではないでしょうか。

社員には平均22本もの運用商品が提示されている

もう一つ、経営者の皆さまに知っていただきたい数字があります。

企業型DCで社員に提示されている運用商品は、平均で22.1本です。

そのうち投資信託だけでも平均18.0本あります。

考えてみてください。

これまで投資をしたことがない社員に、

「預金、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、バランス型……この中から自分で選んでください」

と言って、本当に適切に判断できるでしょうか。

多くの人にとっては、

「よく分からないから、とりあえず元本保証の商品にしておこう」

「なんとなく名前を聞いたことがある商品を選ぼう」

という行動になっても不思議ではありません。

だからこそ、制度を用意するだけではなく、

「なぜ長期運用が必要なのか」
「株式と債券は何が違うのか」
「リスクとは何なのか」
「分散投資とは何なのか」

といった基本的な金融教育が必要になります。

実際に22.6%の加入者が「元本確保型商品だけ」で運用

調査では、元本確保型商品のみで運用している加入者の割合は、企業平均で22.6%となっています。

もちろん、元本確保型商品を選ぶこと自体が間違いということではありません。

年齢や資産状況、リスク許容度によっては適切なケースもあります。

しかし問題なのは、

「理解した上で選んでいるのか」
 

それとも
「分からないから選んでいるのか」

という違いです。

企業型DCでは長期間にわたって積み立てを続けるケースが多いため、わずかな運用利回りの違いでも、20年、30年後には大きな差になる可能性があります。

実際、この調査では、制度導入から2024年度までの平均運用利回りは、平均で**年4.7%**でした。

もちろん将来の運用成果を保証する数字ではありません。

しかし、長期間にわたる資産形成において、「どのように運用するか」が非常に重要だということは分かります。

投資教育は「投資を勧めること」ではありません

ここで誤解していただきたくないのは、投資教育とは、

「株を買いましょう」

「この投資信託を選びましょう」

と会社が勧めることではありません。

大切なのは、社員が自分で判断できる力を身につけることです。

例えば、

・インフレとは何か
・預金と投資の違い
・長期・積立・分散とは何か
・リスクとリターンの関係
・株価が下落したとき、どう考えるのか
・退職後、どのように資産を取り崩すのか

こうした基礎知識を社員に伝える。

その上で、一人ひとりが自分の年齢、家族構成、資産状況、将来設計に合わせて判断する。

 

これこそが、本来の金融教育ではないでしょうか。

社員の「お金の不安」は、会社とも無関係ではない

経営者にとって、社員の資産形成は一見すると「個人の問題」に見えるかもしれません。

しかし、社員が将来のお金について不安を抱えているとすれば、それは会社とも無関係ではありません。

老後はいくら必要なのか。

住宅ローンを返しながら教育費を準備できるのか。

年金だけで生活できるのか。

NISAや企業型DCをどう使えばよいのか。

こうした不安を抱えながら働いている社員は少なくありません。

会社が給与を上げることだけが、社員を支える方法ではありません。

「お金について正しい知識を学べる会社」

 

であることも、これからの福利厚生の一つになっていくのではないでしょうか。

大企業のような研修を用意する必要はない

「でも、うちのような中小企業で金融教育なんてできない」

そう思われる経営者もいるかもしれません。

しかし、調査を見ると投資教育の方法は多様です。

最も多いのは「社内報やメール、イントラ等での周知」で52.1%。

続いて、

動画視聴 43.4%
オンラインセミナー 38.0%
集合研修 35.7%

となっています。

つまり、何十万円もかけて大規模な研修を開催する必要はありません。

例えば、

年に1回、60分のオンライン研修を行う。

毎月1回、お金に関する短い情報を社員へ届ける。

希望者には個別相談の機会を用意する。

 

これだけでも十分な第一歩になります。

人手不足の時代、「社員を大切にする会社」が選ばれる

これから多くの中小企業にとって、大きな経営課題になるのが人材の確保です。

給与や休日だけで会社を比較される時代から、

「この会社は、自分の人生まで考えてくれているか」

という視点で企業が選ばれる時代になっていくでしょう。

退職金制度や企業型DCを用意する。

そして、その制度を社員が正しく活用できるように教育する。

これは単なる福利厚生ではありません。

人材への投資です。

会社が社員に提供できるものは、給与だけではありません。

 

知識もまた、社員に残る大切な財産です。

「制度を導入した会社」から「社員の人生を支える会社」へれる

 

今回の企業年金連合会の調査では、企業型DC実施企業の82.1%が継続投資教育を実施しています。

この数字から見えてくるのは、

企業型DCは「導入して終わり」の制度ではない

ということです。

制度をつくる。

社員に学んでもらう。

運用状況を確認する。

そして、また学ぶ。

このサイクルを続けることで、初めて企業型DCは社員の資産形成を支える制度として機能していきます。

中小企業だからこそ、社員一人ひとりの顔が見えます。

だからこそ、

「会社で働いてくれる社員の将来まで、一緒に考える」

そんな経営ができるのではないでしょうか。

社員への投資教育は、コストではありません。

社員の安心と、会社の未来をつくるための人への投資だと私は考えます。

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